Ankiは「忘れた頃に出題してくれる」単語カードアプリです。無料で高機能、医学生から語学学習者まで世界中に愛用者がいる。その一方で、初回起動した画面の素っ気なさに面食らって閉じた人も多いはずです。メニューは多いし、用語は独特だし、何から触ればいいか分からない。
この記事では、Ankiの使い方を英単語学習に必要な範囲だけに絞って解説します。全機能の解説はしない。インストールからスマホ同期、カード作成、最初に変えるべき設定3つまで、手順どおりに進めれば今日から復習が回り始めます。
Ankiとは|料金と対応環境を最初に整理
Ankiは間隔反復(忘れかけたタイミングで復習させる方式)を自動化するフラッシュカードアプリです。エビングハウスの忘却曲線に基づいた学習法で、覚えたカードは出題間隔がどんどん延び、間違えたカードは短い間隔で戻ってきます。
料金は環境で異なります。
| 環境 | アプリ | 料金 |
|---|---|---|
| PC(Windows/Mac/Linux) | Anki | 無料 |
| Android | AnkiDroid | 無料 |
| iPhone/iPad | AnkiMobile | 4,000円(買い切り ※2026年8月時点) |
| ブラウザ | AnkiWeb | 無料 |
iPhoneユーザーはAnkiMobileを買うか、ブラウザでAnkiWebを使うかの二択になります。AnkiWebは機能が限られるので、本格的に使うなら買い切りに投資するか、後述の代替も検討してください。
セットアップ3ステップ|PCで作ってスマホで復習が基本形
Anki運用の基本形は「PCでカードやデッキを管理し、スマホでスキマ時間に復習する」です。この形を作るまでが最初の山なので、順番にいきます。
ステップ1: PC版Ankiをインストール
Anki公式サイトからOSに合ったインストーラーをダウンロードして実行します。初回起動で言語を選べば日本語表示になります。
ステップ2: AnkiWebアカウントを作る
同期の要になる無料アカウントです。AnkiWebでメールアドレス登録し、PC版Ankiの「同期」ボタンからログインします。これでカードの学習履歴がクラウドに保存され、機種変更でも消えません。
ステップ3: スマホアプリを入れて同期
AnkiDroidまたはAnkiMobileをインストールし、同じAnkiWebアカウントでログイン。初回同期で、PCで作ったデッキがそのままスマホに現れます。以後は「学習の前後に同期ボタンを押す」を習慣にしてください。同期しないまま両端末で学習を進めると、あとで一方向同期を迫られて片方の記録を失うことがあります。
英単語カードの作り方
デッキ(カードの束)を作り、その中にカードを追加していきます。
- メイン画面下の「デッキを作成」で名前を付ける(例:「英単語」)
- 上部の「追加」をクリック
- ノートタイプは「基本」のまま、表面に英単語、裏面に意味を入力
最初は凝らないのがコツです。表は英単語だけ、裏は日本語訳と例文1つ。画像や音声は後からいくらでも足せます。カード設計で1時間悩むより、10枚作って今日の復習を始める方が確実に前進します。
覚える方向は目的で選びます。読めるようになりたいなら英→日、書く・話すで使いたいなら日→英。両方向のカードを自動生成する「基本(裏表反転カードあり)」というノートタイプもありますが、復習量が倍になるので最初は片方向を勧めます。
カードを1枚も作らずに始める方法もある
実は、カード作成をスキップして始める道があります。AnkiWebで公開されている共有デッキをダウンロードする方法です。NGSL(頻出語リスト)ベースの音声付きデッキなど、英語学習に使える定番があります。
どのデッキを選ぶべきか、著作権的に危ないデッキの見分け方はAnki共有デッキおすすめ10選で実データつきで解説しているので、自作が面倒な人はそちらから入ってください。
復習の回し方|4つのボタンの使い分け
カードをめくると「もう一度」「難しい」「普通」「簡単」の4つのボタンが出ます。どれを押したかで次の出題タイミングが変わる、Ankiの心臓部です。
迷ったら次の基準で押してください。
- もう一度: 思い出せなかった。少しでも詰まったらこれ
- 普通: 思い出せた。基本はこれ
- 簡単: 見た瞬間に答えられた。乱発すると間隔が延びすぎるので控えめに
- 難しい: ほぼ使わなくていい。「もう一度」か「普通」かで判断する方がシンプル
ポイントは正直に押すことです。「昨日やったから覚えてるはず」と甘めに押すと、忘却曲線の計算が狂って復習タイミングがずれます。アルゴリズムへの入力は自己申告しかないので、ここの正直さが学習効率に直結します。
最初に変える設定は3つだけ
Ankiの設定画面は項目が多く、ここで挫折する人が続出します。英単語学習なら、デッキの歯車アイコン→「オプション」で変えるのは次の3つだけで十分です。
- 1日の新規カード上限: 20→10枚。デフォルトの20枚で始めると、1ヶ月後の復習量が1日100枚を超えて破綻しがちです。10枚なら月300語、それでも単語帳1冊が4ヶ月ペース
- 1日の復習上限: 9999(実質無制限)。復習を翌日に繰り越すと忘却曲線から外れるため、上限で切らない
- 学習ステップ: そのまま。新しいAnkiはデフォルト値が改善されており、初心者が触る必要はありません
より詳細な設定値(IELTS対策向けの具体値)やSM-2アルゴリズムの仕組みはAnkiでIELTS単語を覚える完全ガイドで解説しています。まずは上の3つで回し始めて、不満が出たら調整する順番で問題ありません。
挫折ポイント3つと対策
Ankiは強力ですが、続かなくなる典型パターンがあります。先に知っておくと回避できます。
復習が溜まって開くのが嫌になる。 数日サボると未消化カードが数百枚になり、心が折れます。対策は2つ。溜まったら新規カードの追加をゼロにして復習だけ消化する。それでも多ければ、溜まったカードを一括で「もう一度」にせず、デッキオプションから新規上限を絞って数日かけて戻す。全部やり直す必要はありません。
設定の正解探しで沼にはまる。 ネットにはアドオンや設定のカスタマイズ情報が無限にあります。断言しますが、英単語学習に高度なカスタマイズは要りません。上の3設定で十分回ります。設定をいじる時間を復習に充ててください。
そもそも管理が性に合わない。 デッキ整備・同期・設定。この管理コスト自体が合わない人は一定数います。私はWordSprintというIELTS単語アプリを開発していますが、作った動機の一つがまさにこれで、忘却曲線ベースの復習タイミング管理をアプリ側に全部任せる設計にしました。Ankiの自由度が負担に感じる人はこちらも選択肢に入れてください。逆に、細かく自分でチューニングしたい人にはAnkiが向いています。
よくある質問(FAQ)
Q1: Ankiは完全無料で使えますか?
PC版・Android版・AnkiWeb(ブラウザ)は無料です。有料なのはiOSアプリのAnkiMobile(4,000円・買い切り ※2026年8月時点)だけ。iPhoneでも、ブラウザからAnkiWebを開けば無料で復習はできます。
Q2: スマホだけで完結できますか?
できます。AnkiDroid/AnkiMobileはカード作成もデッキ管理も可能です。ただし共有デッキの整理や一括編集はPC版が圧倒的に楽なので、初期構築だけPCでやる形を勧めます。
Q3: 同期がうまくいかないときは?
学習前後の同期ボタン押し忘れがほぼ全てです。通常の学習記録は自動で統合されますが、ノートタイプの変更やデッキ削除など構造をいじった後は「どちらを正とするか」の一方向同期を求められることがあります。その場合は直近まで正しく使っていた側を選んでください。
Q4: 英語以外の勉強にも使えますか?
使えます。医学・法律・歴史など暗記系全般が対象です。分野別の共有デッキも公開されています(共有デッキの探し方参照)。
まとめ
Ankiの始め方を最短ルートでまとめると、こうなります。PC版を入れてAnkiWebアカウントで同期を組む。カードは「基本」ノートタイプで表に英単語・裏に訳。新規上限だけ10枚に変える。ボタンは正直に押す。これだけです。
道具の学習コストはゼロではありませんが、一度回り始めた忘却曲線の復習は、根性で回す単語帳とは別物の定着をもたらします。まず10枚、今日作ってみてください。
著者: Ko Inoue(IELTS 6.5取得、IELTS単語学習アプリ「WordSprint」開発者)


